絶縁物の使用温度の上限値について

光のあたったケーブルイメージ

ケーブルの導体は、電流を通しにくくする絶縁物で覆われています。なお、絶縁物は使用温度により性能が異なることをご存じでしょうか。

そこで今回は、絶縁物の使用温度の上限値についてご紹介します。

絶縁物とは?

絶縁物とは、電流を通しにくい物質(電気的絶縁物)、または熱を通しにくい物質(熱絶縁物)を指します。ケーブル内の導体を絶縁物で被覆することにより、電流が所定の場所以外に流れてしまうことを防いでいるのです。

ケーブルの絶縁物として使用される素材には、ゴム(天然ゴムやエチレンプロピレンゴムなど)、プラスチック(ポリ塩化ビニル、エチレン・四フッ化エチレンなど)があります。

絶縁物はどんな場面で使用される?

絶縁物は、電柱の変圧器や発電所の発電機、モーターなどの電気機器で使用されます。その他、スマートフォンやタブレット端末のタッチパネルとして採用される投影型静電容量方式では、タッチパネルの表面にガラスでできた絶縁フィルムが貼られています。

絶縁物の種類

絶縁物は、気体絶縁物、液体絶縁物、固体絶縁物の3種類に分けることができます。

気体絶縁物

空気やガス、水素ガスなどの気体は絶縁性を持ちます。圧力を高めたり、真空にしたりすることで絶縁性を高めることが可能です。

液体絶縁物

変圧器で使用されることが多く、主流である鉱物油の他、合成油や混合油があります。電気的絶縁物としてだけでなく、熱絶縁物(冷却材)として活用することが可能です。

固体絶縁物

塩化ビニル、合成ゴム、ポリエチレン、エポキシ樹脂、ガラス、紙など、非常に多くの素材が存在します。それぞれの素材を加工することで、さまざまな用途に合わせた絶縁物としての使用が可能です。

絶縁物の使用温度に上限値はある?絶縁破壊について

通常、絶縁物は電圧を加えてもほとんど電流が流れません。しかし、絶縁物に加える電圧を上昇させると、ある一定の電圧で大きな電流が流れます。これを絶縁破壊と呼び、絶縁破壊が起こる電圧の値が絶縁破壊電圧です。

絶縁物は、高温状態では絶縁性が低下し、絶縁破壊が起こりやすくなります。また、長期間高温で使用した場合、経年劣化による絶縁性の低下も懸念されます。

ケーブルをはじめとする電気用品は、電気用品による危険や障害の発生を防ぐための規制を定めた「電気用品安全法」の対象であり、技術上の基準に適合する必要があります。なお、製品に使用される絶縁物の温度上限値については、「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について(通達)」の別表第十一で定められています。

おわりに

絶縁物は種類が多く、さまざまな用途で利用されています。絶縁物は基本的には電流を通しませんが、大きな電圧が加わると絶縁破壊が生じる可能性があります。安全に電気機器を使用するためには、仕様書などで使用温度を確認するようにしましょう。