配線状況による許容電流の低減率

配電盤でのケーブル使用
ケーブルの許容電流は、配線の仕方や周囲の温度に左右されます。許容電流が足りないケーブルに大きな電流を流した場合、発火などのトラブルの原因となるため、注意が必要です。

今回は許容電流の意味と、配線状況による許容電流の低減率についてご紹介します。

許容電流とは?

許容電流とは、ケーブルなどに安全に流せる電流の大きさの上限です。安全電流とも呼ばれます。ケーブルなどの導体に電流を流すと抵抗によって発熱するため、大きな電流を流した場合はケーブルを覆うシースなどが溶融し、発火に至る可能性もあります。ケーブルメーカーは発火や火災事故などのトラブルを防ぐため、各ケーブルの許容電流を公表しています。

電線・ケーブルの許容電流に関する事故例

許容電流に関する事故例には、下記のようなものがあります。

・例1:ケーブルラックにケーブルを重ねて使用し発火

機器を入れ替えるため増設工事を繰り返した結果、ケーブルラックに多段にケーブルを積む構造となり、ケーブルが発火した事故例があります。

ケーブルをまとめて積むように布設した場合、放熱性能が低下することが原因です。

・例2:ドラムリールに電線を巻き付けたまま使用し異常発熱

ドラムリールに電線を巻き付けたまま使用して、異常発熱が起こるケースもあります。

これもまた、電線が重なる部分の放熱性能が低下することが原因です。

・例3:周囲温度が高いためにケーブルが高温に

ケーブルを布設する場所が高温である場合は、電流を流さない状態であってもケーブルが高温になります。

ケーブルは電流によって熱せられますが、周囲の温度が高い場合はケーブル本体も高温になっている状態からの温度上昇となるので、短い時間で異常な温度に達してしまいます。

このようにケーブルを重ねて配線したり高温下でケーブルを使用したりすることは、放熱性能の低下を引き起こして発火につながることもあり、危険なため回避したいところです。

しかし、ケーブルを布設できるスペースが限られていると、対策としてスペース確保のためのコストが発生します。

経済面を考慮した結果、ケーブルを多段に積む設計を選択せざるを得ないケースもあります。

この場合は、配線状況に鑑みてケーブルに流す電流を抑える必要があります。

許容電流の補正値は、各メーカーによって定められた低減率を乗算することによって求めることができます。

配線状況による許容電流の低減率

許容電流は配線状況によって異なります。許容電流の低減率に影響を及ぼす要素や許容電流値の補正について見ていきましょう。

気中多条布設における許容電流の低減率

気中多条布設時は、ケーブルをケーブルラックにまとめて配線したりすることが多く、1条布設と比較してケーブル1本当たりの許容電流が低下します。これは、ケーブル同士が密接していることで放熱性能が低下するためです。

したがって、ラックへのケーブルの多段積みをしないなど、ケーブル間の距離をとって十分に放熱できるようにすることが欠かせません。

許容電流の低減率は通電させるケーブル間の距離や、ケーブル配列の段・列の数などによって異なるため、各メーカーが公表している技術資料を確認しましょう。1条布設の許容電流値に低減率をかければ、多条布設における許容電流値を求めることができます。

周囲温度補正係数による許容電流値の補正

ケーブルを設置した場所の周囲温度も許容電流に影響します。例えば、夏場や直射日光の当たる場所にケーブルを設置した場合、周囲温度が40度を超えるケースも存在します。このように周囲温度が高ければ許容電流値は低く、逆に温度が低ければ許容電流値は高くなります。

そのため、ケーブル選定時には、配線環境で想定される周囲温度による補正係数をかけ、実際の許容電流値を算出しなければなりません。

許容電流および低減率は各メーカーの技術資料を参照

ケーブルの各メーカーは、一般に基底温度(周囲の温度)を30℃もしくは40℃としてケーブルの許容電流を定めています。

太陽ケーブルテックの「周囲温度補正係数」「配線路又はケーブルの4心以上の導体電流低減率」および「気中多条布設における低減率」は、下記資料に記載されていますのでご参照ください。

各補正係数は、全米防火協会(NFPA)が定めるNFPA70/79に基づくものです。

許容電流値、電流低減率.pdf

この他、地下や空調設備が整っていないなど、放熱されにくい場所に布設する場合も許容電流の補正を検討する必要があります。

また、ケーブル選定の際にはメーカーの担当者にケーブルを布設する場所について詳細に伝えることで、結果的に布設場所の安全性向上とコストダウンにつながります。

おわりに

許容電流は、ケーブルの配線状況やケーブルを設置した環境などで大きく変動します。許容電流の低減率や周囲温度補正係数を確認して、許容電流値を正確に計算することが大切です。

十分な許容電流を確保できるようにケーブルの配線方法を工夫し、発火や異常発熱などのトラブルを避けましょう。